今日のニュース(イチローに再び悪夢)

 声を荒げるも「何をやったか覚えていない」
 イチローが珍しく、2度も声を荒げた。

 8回1死、キム・ミンジェの打ち上げたライトファウルフライ。フェンス際、イチローはフェンスとの距離を測りながら、落下地点に入る。「捕った」かに見えた打球はわずかに届かなかった。
 直後、イチローは言葉にならない怒号を挙げる。フェンス際に陣取った韓国人ファンは、それを挑発ととり、イチローに向かって激しいブーイングを浴びせ返した。
 イチローは、「何をやったか覚えていない」と言うが、捕球できた可能性があったかと問われ、「ありました」。結果的にあの打者が四球を選び、先制点。イチローはゲームの流れが韓国に傾きつつあることをあのプレーで悟り、悔しさを爆発させたのかもしれない。

 2度目は、ゲームセット終了直後。多村が空振り三振に倒れると、マウンド上では、韓国チームが歓喜の輪を作る。イチローはそのとき、グラウンドから顔をそらし、ダッグアウトの壁に向かって、叫んだ。
 
 その悔しさを試合後も隠さない。
「僕の野球人生の中で、もっとも屈辱的な日です」
 それでも、ダッグアウトから韓国チームのビクトリーラン、翻る太極旗を目に焼き付けた。「不愉快」と思いながらも……。



敗戦の理由は言葉にできず、15秒の沈黙
 昨日夜、韓国には「挑戦者」の立場で臨むと言った。第1打席、そのイチローが打席に向かうと、スタンドを埋め尽くした韓国人ファンからは、すさまじいブーイング。彼らは依然、イチローのコメントに反応していた。
 そんな中で、メジャーでも24打数8安打と打ち込んでいるパク・チャンホからセンター前ヒットを放つと、イチローは彼なりのやり方で、一時的にスタンドのファンを黙らせたのだが、2打席目以降は塁に出られなかった。
 得点圏で打席に立つような場も与えられず、イチローは結局何もできぬまま、グラウンドを後にした。

 格下と見られた韓国に、なぜ勝てないのか。
 王貞治監督は、「相手の執念が上回った」と言ったが、イチローにはその差を言葉にできない。
 韓国にあって、日本にないものは?――イチローはそう問われたが、「何でしょうねえ」と言ったきり、しばらく視線をさまよわせる。そこで、15秒の間。やがて出てきた言葉は、「それがあると思えない」だった。

 敗戦の理由はどこにあるのか。気持ちの整理には、時間がかかるのか?
「――かもしれない」

 2003年9月、プレーオフの望みを絶たれたのも、ここアナハイムだったと、ふと思い返した。